そもそもはかれるくんとは?
—— 今回はQeightの主力製品である「はかれるくん」についてうかがえればと思います。まず、はかれるくんとは何でしょうか。
「はかれるくんは、在庫管理の自動化システムです。電子はかりが備えられた棚とソフトウェアがセットになったものを、はかれるくんと呼んでいます。電子はかりが備えられた棚の上に材料を置くことで、何が何個どこにあるのか、直接見に行かなくてもソフトウェア上で管理できる仕組みになっています」
—— 具体的にその仕組みをうかがってもよろしいですか。
「精密なセンサーが棚の至るところにあって、そのセンサーが重さを量ります。例えば1個の材料が20g、総量が2㎏だとしたら、その材料が100個あるといったように計量できます。棚卸しせず、一個一個数えないで何個かわかるイメージですね。シンプルですが、それをリアルタイムかつ高性能でできるところが売りです。
あとは、棚を置いてモノを置くだけという、誰でも簡単に操作できる点もポイントに挙げています」
▲ はかれるくん 実機
—— 競合他社はあるのでしょうか。
「日本市場で言えば、小さい在庫に限った電子はかりを使ったサブスクリプション型のサービスはいくつかあります。ただ、電子はかり機能が備わった棚をそのまま売っているところはおそらくないと思います」
—— 棚ごとというのが差別化ポイントなのですね。
「あとは単純に量れる単位の幅ですね。他の会社さんは例えば10gから100gなど、10gから2kgのところが多い。ただ、弊社は0.5g〜t(トン)レベルで計量することができます」
はかれるくん 3つの差別化ポイント
- 棚ごと納品するため、後付け工事が不要。電源接続のみで翌日稼働
- 0.5g〜トン単位まで対応。幅広い品目・業種をカバー
- IT知識ゼロでも使えるシンプル設計。棚にモノを置くだけ
『はかれるくん』開発の背景
—— はかれるくんを主力事業として売り出した経緯についてうかがってもよろしいですか。
「2024年1月に会社を立ち上げた時は、基本的にDX事業に軸を置こうと決めており、お客様に対応していく仕事をずっとやっていました。ただ、社内では『プロダクトは絶対必要だよね』という声がずっとあったんです。いずれ自分たちのプロダクトを作って販売していくことは、マストだと考えていました。
DX事業において、いろんな製造業のお客さんと話し、実際に300社くらい担当者の方とお話しました。その中ある企業さんが在庫管理のIT化だけ困っているということで、取引させてもらうことになり、そこではかれるくんを作ろうと決めました。
現時点では入荷数と出荷数を入力することで、在庫数を足し算引き算で計算する理論値管理を基幹システム上でやっているところがほとんどですが、それは現状のベストではないと思います。入荷、出荷を手動で数えるとなると、忘れたり、数え間違えたり、入荷したのに棚に入れてなかった…など、ヒューマンエラーがとても多くなってしまうので。その部分でフィットしたシステムを備えている会社さんがあまりないと思ったからこそ、プロダクト化を決断しました」
「弊社は既に2〜300の製造業の会社さんと話していたので、『いやいけるだろう』と。展示会に出展した際に見せたデモの評判が良かったことも後押しになりました」
—— プロダクト化するにあたっては、どのような会社さんと協業されたんでしょうか。
「弊社に相談いただいたクライアントさんが困っていた理由を推測すると、おそらく国内企業ではベストなソリューションを導き出せなかったからだろうと。なので、海外の企業と協業することを考えました。弊社の強みは元々海外との連係にある(現在7カ国の企業と取引している)ということもあり、10〜20社くらい海外企業に声をかけて面談をし、協業先を決定しました」
▲ 展示会時の様子
思いもしなかった
"誤算"
—— その会社とプロダクト化を進めていくわけですね。
「ただ、実はそれが全く順調に行かなかったんです。展示会にプロダクトとして出展する予定だったのですが、1月に協業していた海外の会社さんから、『ちょっと方向転換します』という連絡がありました。簡単に言うと、これまで作っていたものを一から作り直すことになったんです」
—— それは一大事ですね…!
「それまで6ヶ月積み重ねてきたものが、一瞬で失われてしまいました。その一方、お客さんはいますし、新規営業も続けている。弊社の製品を待っている方がいる。だからこそ、社内としても、私個人としても精神的にかなり落ち込んでいました。
ただ、徐々に『これはいい機会だ』と思うようにもなれたんです。『もっといいものを作ろう』と。なので、前回開発したとき以上に、より良いものを作ってくれるような会社を世界各地で探しました」
「初号機を作る際は10社くらいと話しましたが、新版を作るにあたって40社と面談しました。韓国、中国、タイやイスラエル、フランス、ドイツ、アメリカも……」
—— 40社も!どうやって探したのでしょうか。
「各国の特徴を鑑みて探しました。例えば韓国であればNAVERで探す、中国だったらBaiduで探す……。あとは知人の紹介も含めて探していましたね。振り返ると本当に大変でした(苦笑)。
その中で、0.5gからt(トン)単位まで計量できる技術を持っている会社さんを発見し、初号機からバージョンアップできることを明確にした後、もう一度パッケージング化する作業を始めました」
—— 新たな協業先が見つかる前から、既にプロダクトの発注を受けていた会社さんもあったんですよね。
「そうですね。注文していただいた会社さんには1月に謝って事情を説明し、『もっといいものを必ず作る』とお約束しました。そこから1月〜3月にかけて急ピッチで仕上げ、5月にデモができる状態まで持って行きました。6月から順次新版を導入していきます」
—— 1月から3月は相当タフな期間だったと思うのですが、振り返るといかがですか。
「焦ってはいました。お客様に満足してもらうため、ひたすら試行錯誤を繰り返していたので……。スピード感も求められていたのですが、強いパートナーシップを築くためにも、協業先の選定に時間をかけていました。協業先を決めた後は、私とコアメンバー2人でその2日後に協業先の会社さんがある土地に飛行機で赴き、その場で交渉・契約しました」
「お客様に『できます』と言っている以上、プライオリティと質を上げて作ることしか頭にありませんでした」
『はかれるくん』で
実現できること
—— はかれるくんを導入すると、具体的にどのような効果がありますか。
「『棚卸し、本当にめんどくさい。だけど、結局やり続けるしかないよね』という現場の方の意見をよく耳にします。1個1個数えたのに、個数が違ったからやり直し……というストレスも解消できますし、24時間365日リアルタイムに管理できるようになるのもポイントです。在庫がなくなりかけたらアラートが鳴って光るので、発注タイミングを絶対に逃しません」
▲ 重量棚(左)・RFID棚(右)の設置例
—— はかれるくんの導入は、どんなお客様に適していると考えていますか。
「いまは完成品ができる前の部品を計量する用途で、製造業の会社さん中心に使っていただいております。ただ、それだけではなく、病院やホテルなど、多様な方々に使っていただけるプロダクトだと考えています。
病院であれば、メスのように使い切りのものや薬のような貴重品に。ホテルであれば、歯ブラシやタオルなど、使い切りのもの。定期的に発注する必要があるものに対して、在庫が減れば自動的にはかれるくんのアラートが鳴って光ります。あとはメールによるリマインド機能も備えられています」
—— 病院も在庫管理に悩んでいるところが多いのですね。
「病院の方々からお話を聞く限り、管理を紙ベースで行っているところが多いです。これを1g使った、これを1g使った……それだとどうしてもヒューマンエラーが起こってしまいます。
ただ、弊社のシステムは本当に単純です。モノを電子はかりの上に置いて、その後はほぼ何もしなくてOK。それだけで何が何個あるかわかり、モノが減ったら赤く光るシンプルな仕組みなので、ITリテラシーを必要としません。だからこそ、様々なお客様の負担が解決できると信じています」
はかれるくんが活躍する現場
- 製造業 ── 部品・原材料の棚卸しを自動化。人件費・工数を大幅削減
- 病院 ── メス・薬など使い切り医療材料の在庫をリアルタイム管理
- ホテル ── アメニティ・タオルなど消耗品の発注タイミングを自動通知
読者へのメッセージ
—— 最後に内田CEOから読者の方々にメッセージをお願いいたします。
「はかれるくんとは直接関係がないのですが……。いまの日本は、生産性がとても低いと思っています。良いモノは持っているけれど、それを生み出す効率をもっと高めないといけません。生産性はG7でダントツに低いって言われています。
ただ、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という本が出されるくらい、日本が技術的にはいいものをたくさん持っていることは間違いないですし、ノウハウもあるはずなんです。特に製造業はそうですよね。ただ、そのベースがあるのにも関わらず、生産性が上がらず、国力も落ちている。そのギャップを少しでも自分たちが埋めることができれば、お客様にとっても、日本にとっても良い。そのステップの一つとしてはかれるくんを使っていただけたら本当に嬉しいです」
「私は学生時代に世界一周した経験があるのですが、改めて日本はすごく独特な国です。はるか昔から高い技術力を保ち、多くのモノを発明してきた。弊社の製品が日本の再興にも一役立つと幸いです」
Text by Takumi Fujii